「災害で一人の犠牲者も出さない」弘億団地自主防災会の決意

弘億団地自主防災会

会長 柳原 隆司

弘億団地自主防災会は、発足当初から自治会の役員の協力を得ながら、避難訓練や防災展などの活動を通じて、災害の被害者や犠牲者を出さないことをめざして来ました。

しかし、1年で交代される自治会役員の皆さんへの負担が大きい上、活動の継続性に課題があること等から活動の方向性について模索していました。

「平成30年7月豪雨」において、災害発生の日降水量閾値200mmに安古市地区は達することなく、大きな被害も発生しませんでしたが、もし、この状況で1時間雨量が40mm以上の降雨があれば、被害を生じたのではと思われます。

平成30年7月豪雨では死者・行方不明者数が200名を超えるなど、近年稀にみる大惨事と なった。この豪雨被害を受けて、国・県における検討報告書が発表され、「平成30年7月豪雨を教訓とし激甚化・頻発化する豪雨災害に対する避難対策の強化」を推進することが求められました。

このような状況から、避難誘導にI C Tを活用できないか模索する中で、「平成26年8月豪雨」で大きな被害を受けた可部東の新建自治会でI C T 活用による避難体制を実施されていることが分かり、弘億団地自主防災会でも導入すべく新建自治会のご協力により検討を進めた。

従来型の防災活動を I C T 活用の防災活動に変えるために、キャッチフレーズを「インフォメーションからコミュニケーションへ」へと定め、実施計画を作成し、ソフトを利用するための環境整備と機器の購入等について、「スマート自治会」として公表されているシステムエンジニアの方の協力のもと、2019年2月{ひと・まち広島未来づくりファンド第17回助成事業に「弘億団地防災会ポータルサイトの運営〜防災会の情報共有化」}の活動テーマで応募し、5月の審査会で採択された。

引続き、2020年2月{ひと・まち広島未来づくりファンド第18回助成事業に「弘億団地防災会ポータルサイトの運営〜防災会の情報共有化、バージョンアップ」}の活動テーマで応募し、6月助成決定された。

2019年度新生自主防災会として役員体制を再構成し、さらに協力委員や専門委員の皆さんの協力を得ながら活動を継続して来ております。

この間、通信技術の急速な進歩により、弘億団地の皆さんへの避難情報等の伝達手段にも大きな変化があります。現在は団地全体を対象にした「安心メール」と警戒区域を対象にした「安否確認システム」により、必要な情報を届けるシステムを構築していますが、さらに、2020年秋季から自主防災会のホームページを立ち上げるに至りました。

<弘億団地自主防災会活動の決意>

 「災害で一人の犠牲者も出さない」防災会の活動はこの一言につきます。

そのために、さまざまな活動を進めてきましたが、「犠牲者を出さない」ためには住民の皆さんの防災に対するご理解やご協力が何より必要と考えています。

防災については、数々の報告や文献が発表されております。中でも地域の説明会などの機会があるたびに会長として申し上げている事は、広島市が発令する避難情報、警戒レベル3で「安否確認システム」を立上げ、早期避難を呼びかけることから、土砂災害警戒地域にお住まいの方はスマホを立上げ、「弘億カード」のQRコードから「安否確認システム」画面を使って、自らの避難行動を率先して隣近所に発信し、又は発信していない隣近所の方へ声を掛けて頂きたいと言う事です。

以下に釜石市の小中学生への防災教育から、東日本大震災における「釜石の奇跡」と言われる実績を残された片田先生が監修された、北九州市のホームページに掲載された一文を引用してご紹介いたします。

北九州市ホームページ 防災の心構え-保存版「あなたと家族の命を守るために」17頁より

「お互いさまの気持ちで自分の地域から一人の犠牲者も出さない !」

大きな災害が起こったとき、頼りになるのは、ご近所さんです。

これまでの大きな震災でも、家具や家の下敷きになった人をいち早く助けだしたのは、家族やご近所さんでした。

地震の揺れがおさまったあと、最初に声をかけ合い、安否を確認し合ったのもご近所さんだったという話もあります。

東日本大震災後、絆という言葉をよく耳や目にしたのではないでしょうか。

あなたの一番近くにある、いざという時に頼りになる胖、それは、ご近所さんとの絆です。

もしもの時、ご近所さんと助け合えるよう、町内会への加入や日ごろからお互いに挨拶を交わすなど、顔見知りになり、信頼し合えていると安心ですね。

自然災害では、いつ誰が「助けが必要な人」になるかわかりません。 助け、助けられるのはお互いさま。

あなたが逃げるときに、高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、外国人など、助けが必要な人がいれば、可能な限り助けてあげてください。

あなたのまわりの人、地域の人を助けるためにも一番大切なことは,あなたが卒先して懸命に自分の命を守ることです。

自分の命を守れなければ、他の人を助けることもできません。

近くの人に「逃げよう!」と声をかけながら,必死に自分の命を守ってください!

あなたが、ちゅうちよなく懸命に自分の命を守り逃げる姿はまわりの人の心や体を動かします。

それが防災の基本であり,地域から犧牲者を出さないことにつながります!

「釜石の奇跡」記事との出会い

私は2014年以降防災に関する文献や書籍を読み漁りました。

その中で、最も衝撃的で胸を詰まらせた読み物は『致知』2011年8月号 「釜石の奇跡は、かくて起こった」の記事でした。

今もってその記事を読み返すと、初めて読んだ時の感情が込み上げてきます。是非「釜石の奇跡」と言われる実話に目を通して頂きたく思います。

以下に奇跡を起こした津波防災教育の3 原則について内閣府防災情報のページに掲載された一文を引用してご紹介いたします。

内閣府 防災情報のページ 平成27年度広報誌「ぼうさい」秋号(第80号)

特集 津波防災の推進について 津波から命を守る

津波から命を守るために一番にとるべき行動は「素早い避難」です。

東日本大震災の大津波が東北地方の沿岸部に甚大な被害を及ぼした中、岩手県釜石市内の児童・生徒の多くが無事であった事例が「釜石の出来事」として反響を呼んでいます。これは群馬大学大学院の片田敏孝教授が提唱する「津波避難の三原則」、第一「想定にとらわれるな」、第二「最善をつくせ」、第三「率先避難者たれ」を忠実に実行した結果であったと言えます。

この三原則の中で一番大事なことは、第一の「想定にとらわれるな」です。例えば各地域で作成している「ハザードマップ」等に記載されている警戒情報は、「あくまで予想」と考えること。相手は自然でありどんなことが起こるか分かりません。自分の居る場所がハザードマップでは安全と判断される場所であっても油断しないことです。

第二の「最善をつくせ」とは、一時的に避難した場所が決して一番安全な場所ではなく、その場所に留まることに固執せず、より安全な別の場所に避難できるかを考える、そのときに出来る最善をつくして避難行動をすることです。

第三の「率先避難者たれ」とは、通常私たちは「自分は被害に遭わないだろう」と考えがちですが、この考えを排除し、率先して避難することです。「想定」に頼らず自分たちで判断するのは、とても難しいことです。しかし、いざというときには想定以上のことを判断しなければならない事態が起こることを考えておきましょう。