片田敏孝(東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター特任教授)

 私は「災害で一人も死なない」ことが防災の基本であり、「事前の防災」こそが最優先の課題だと考えています。 そして、子どもたちの「姿勢を育む防災教育」こそが、そのための重要な役割を果たすものと確信しています。

 教育現場におられるすべての先生方が、地域の皆さんとも手を携えられて、明日を担う子どもたちがその日、そのときしっかりと自分の命を守れるように、より一層ご尽力いただくことを願っています。

「事前の防災」と「事後の防災」

 防災対策には、災害から命を守るために備える「事前の防災」と、災害のあと生き延びるために備える「事後の防災」の2つがあります。 疾病対策でいえば、前者は病気にかからないようにする「予防」に相当し、後者は病気にかかったあとの「治療」に相当するものです。具体的な「事前の防災」と「事後の防災」には、次のようなものがあります。

事前の防災

• 地震の揺れ、津波の襲来、土砂災害や液状化 などから身を守る対策

• 災害時の火災発生を未然に防ぐ対策

• 建築物の耐震化

• 家具や照明器具などの転倒•落下防止対策

•  防災•減災のための教育や訓練(防災訓練、 避難訓練、防災教育など)

事後の防災

• 非常食や水などの備蓄

• 非常持出品の準備

• 災害発生時の対応(救命•救助活動、消火活動、 緊急物資の調達や輸送、避難者や帰宅困難者対策、ライフライン•インフラの復旧、広域支援体制の構築など)

避難の三原則

その1「想定にとらわれるな」

東日本大震災では予想をはるかに超える大津波が襲来した。このように大きな災害のときは、想定外の事態が起こりうる可能性は常にある。ハ ザ一ドマップなどの情報を鵜吞みにせず、避難することを最優先する。

その2 「最善をつくせ」

自然災害の場合、相手は自然なのだから、いかなる事態も起こりうる。そうした事実に対して謙虚になって、そのときできることに全力を注ぎ、 少しでも早く、少しでも遠い場所に避難する。

その3 「率先避難者たれJ

いざというときは率先して避難する。その姿が他の人の避難を促し、多くの命を救うことにつながる。とくに津波発生時や土石流発生時など緊急を要する場合は、「避難勧告」などの指示を待たず、 自らの判断ですみやかに行動することが大切。